地域に開かれたお寺へ 真宗大谷派舊縁寺・栁澤さん夫妻が続ける「頑張りすぎない」寺づくり
福岡県行橋市の真宗大谷派舊縁寺(きゅうえんじ)(旧縁寺)を預かる住職の栁澤明さん(43)、坊守のさとりさん(45)夫妻は、仏教講座からマルシェまで、さまざまな活動を通じてお寺を地域に開いている。交友関係の広いさとりさんと門徒からの信頼が厚い明さんが、肩の力を抜いて頑張りすぎずにいることで、多くの人々を引き寄せている。
門徒の負担を考慮
特性の有無にかかわらず誰でも楽しめるマルシェ、和ろうそくをテーマにした映画上映、寺子屋に子ども食堂―。さとりさんの画像共有アプリ「インスタグラム」では、舊縁寺の多彩な活動が紹介されている。「お寺を開こう! と頑張ってやっているつもりはないんです」。さとりさんがそう話せば、明さんは「門徒を増やすことが目的ではありません。普段お寺にご縁のない方が仏教に触れてもらうきっかけになればと思っています」と応じる。

きっかけは、門徒総代から上がった心配の声だった。「若い人がお寺に来なくなったね」。初めはその声に応えようと、2016(平成28)年から店舗にひな飾りを展示する地元商店街のイベント「ゆくはし商店街めぐり ひな祭り展」に参加した。
お寺に飾った7段のひな人形などが評判を呼び、境内はにぎわったが、3年ほど続けたとき、さとりさんはあることに気付いた。門徒の負担が大きかったのだ。
お寺が何か行事をするとき、門徒は率先して準備や運営の手伝いに来てくれる。「ご門徒さんは高齢化が進み、年に4回の法要だけでも大変なのに、これ以上負担を大きくしていいのか。これは本当に自分のやりたいことなのか」。しかもひな祭り展は約1カ月間続く。
「大勢の人に来てもらうために何かをやる、というのは違う。もう一度考えよう」。折しもコロナ禍となり、夫婦で活動を見つめ直すことにした。
出会いの地はインド

舊縁寺で生まれ育ったのは、さとりさんの方だ。
思春期の頃からお寺のことが嫌になった。来客が多く、プライベートな時間がほとんどない。一般家庭と違っていることが嫌なのに、「さとり」という名前でお寺の子だと分かってしまう。早く離れたくて、大学進学と同時に実家を出て、卒業後に東京で看護師になった。
一方の明さんは、神奈川県の一般家庭の出身で、根っからの理系。電気通信大学大学院1年の夏休みに、さとりさんと出会った。場所はインド東部コルカタ(カルカッタ)。貧困や病気に苦しむ人々を救済するために設立されたマザー・テレサの「マザーハウス」の関連施設「ナボ・ジボン」でボランティアをしていたとき、休暇を取って現地を訪れていたさとりさんと、たまたま宿泊先が同じだった。
