【熊本地震】被災地に「日本笑顔プロジェクト」存在感
真言宗豊山派浄光寺(長野県小布施町)の林映寿副住職が代表理事を務める一般財団法人日本笑顔プロジェクトが、令和8年熊本地震の支援活動で存在感を示している。爆発事故が起きたイオンモール熊本(熊本県嘉島町)での人命救助に続き、寺院への緊急食料供給や民間団体と連携した仮設入浴施設の運営などに取り組む。数々の災害現場に出動した経験と、宗教者ならではのネットワークが生きている形だ。
日本笑顔プロジェクトは2011(平成23)年3月の東日本大震災をきっかけに設立された。19年10月の台風19号災害では、長野県北部を流れる千曲川の堤防が決壊し、地元の小布施町が被災。流木や土砂の撤去を行うために重機は用意できても、操縦できる人が足りなかったことを教訓に、重機オペレーターを養成する活動を始めた。
20年には「平時を楽しみ、有事に備える」をモットーにした防災パーク「nuovo(ノーボ)小布施」を開設。千葉、埼玉、広島の各県にも展開し、重機講習会の受講者は約3千人に達した。
こうした裾野の広がりが災害現場で即戦力となるオペレーターを輩出。24年の能登半島地震では自衛隊などと協力し、道路をふさぐ土砂の撤去などを行って孤立する集落へのルートを確保した。今回の熊本地震でも発生翌日の7月29日にイオンモール熊本の爆発事故現場に入り、消防や警察、自衛隊などと連携して人命救助に参画した。
民間企業との結び付きも強めている。18年に災害時の協定を結んだ石井食品(石井智康社長、千葉県船橋市)は8月3日、同社唐津工場(佐賀県唐津市)から非常用食料として常温保存できるミートボールやレトルトのおかゆ約6千食を提供した。

ミートボールは避難生活で不足しがちなたんぱく質を補給し、おかゆは野菜と玄米で幅広い世代が簡単に食べられる。日本笑顔プロジェクトのメンバーが被災寺院や介護施設を中心に配布した。
真言宗醫王寺は全壊
林代表理事らは翌4日、甚大な被害を受けた県内の寺院を巡った。
宇城市の高野山真言宗不動明王寺(稲田実勝住職)。倒壊はかろうじて免れたが本堂の柱が曲がり、壁は剝がれて至る所にひび割れが生じていた。
16年の熊本地震よりはるかに強い揺れで、地面には亀裂が走り、隣家との境界上で補強した塀の鉄骨も折れ曲がった。

電気は復旧したが断水が続いている。高齢の母親が避難所で暮らしているという稲田住職は「支援物資は非常にありがたい。近隣住民や檀家にも配りたい」と語った。
一方、八代市の高野山真言宗醫王寺(いおうじ)(有田盛芳住職)は本堂と庫裏が全壊した。国の重要文化財で本尊の薬師如来立像は無事だったが、境内の仁王像は真っ二つに割れ落ち、灯籠も倒壊した。


有田住職の妻は「バリバリという音を初めて聞いた。家中が崩れ落ちる中、偶然にも隙間があった玄関から家族3人逃げ出すことができた。命が救われたのは無事だったご本尊のおかげかもしれない」と語る。
有田住職は腕、足、背中を打撲した。「建物のほぼ全てを失った。ここまできたら悲しんでいても仕方がない。開き直って一歩一歩始めていくしかない」と話した。
林代表理事らはその後、境内の灯籠などが倒壊した同市の高野山真言宗神晃寺(森本道法住職)のほか、同市内の訪問看護ステーション、有料老人ホームなどを訪問した。
風呂で日常を取り戻す
復旧の歩みを進めるのは、物質的な支援だけではない。避難所となっている氷川町の氷川中学校では、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町)が展開する仮設入浴施設の運営支援を実施。グラウンドにキャンピングカー2台を配備し、冷房の効いた休憩室や宿泊施設などとして活用している。
仮設入浴施設は、プールの水を浄化装置できれいにした風呂で、子どもから高齢者まで大人気だという。当初は男女入れ替え制だったが、9日から浴槽や個室シャワーを増設し、男女が同じ時間帯に利用できるようになった。

熊本市では3日に40度を超す酷暑日を初めて記録するなど猛烈な暑さが続く。日中にかいた汗を洗い流し、リフレッシュできるのは大きな効果がありそうだ。
林代表理事は「後片付けの疲れや避難所生活の緊張感を和らげてくれるお風呂は、心の安定にもつながる。少しでも笑顔を見せてくれれば」と話している。
