宗教家の無理解への驚き 「ヒューマン・スタジオ」代表兼相談員 丸山 康彦
今年6月、短文投稿サイトX(エックス、旧ツイッター)に投稿された、ある寺院のご住職の不登校対応論が大きな反響を呼んだことをご記憶の方がいらっしゃると思います。
要約すると「不登校でも規則正しい生活をさせ、学校が稼働している時間帯には机に向かわせる」「(生活を)子どもに任せるのではなく、親が本気で向き合うべき」というものでした。
この投稿はたちどころにリプライ(コメント)が多数付くとともに、引用投稿も多数に上るなど、賛否が渦巻く状況になりました。
そして、賛同意見より多かったのが不登校のお子さんの親御さんや不登校相談に携わっている関係者からの反論だったのです。
すなわち「そんなことはさんざんやってダメだったんだよ」「私はそうやってわが子を追い詰めてしまった」「親御さんがわが子の生活が崩れていくのを何もせず見ていたとでも?」などといった意見でした。
なかには「宗教家もこういうことを言うんだ…」などと失望感をにじませた投稿もありました。
さて、この投稿の何が反発を招いたのでしょうか。
ひとつは、前述のとおり「宗教家の無理解への驚き」だったのではないでしょうか。
宗教家は「学校に行く、行かない」「就労する、しない」という現世(それも現代だけ)の価値観を超えた〝生きる知恵〟を教えてくれる存在というイメージを持たれています。そのため、不登校についての世間一般と変わらない意見に違和感を抱かれてしまったと思うのです。
もうひとつは、前述のとおり「不登校児の親は大事なことをわかっていない/やるべきことをやっていない」という決めつけに対する反発だと思います。
心理カウンセリングの講座では「アドバイスしたことの多くは本人がすでにやっていること」という原則を叩(たた)きこまれます。この投稿が提案したことも、親御さんの多くはさんざんやってきたことだったのです。
*
小中学校の不登校児童生徒数は約35万人(文部科学省調査)、15歳~64歳のひきこもり(高校や大学での不登校を含む)は推計146万人(内閣府調査)という膨大な人数に上り、社会問題になっています。
本連載では、そうした現象の背景を探り、宗教施設が対応するうえで必要な知識と情報をご提案していきたいと考えています。

丸山康彦(まるやま・やすひこ)
不登校・ひきこもり相談員事務所「ヒューマン・スタジオ」代表兼相談員。藤沢市社会福祉協議会アドバイザリー。不登校と「おとなひきこもり」の経験者として、多様な業務を通じて理解と対応の在り方を伝えている。著書に『不登校・ひきこもりが終わるとき』(照林社)がある。ヒューマン・スタジオhttps://husta.hp.peraichi.com/
