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【熊本地震】令和8年熊本地震 1カ月宗派超え 仲間支える 曹洞宗・岩崎哲秀住職が奔走

 令和8年熊本地震は28日、発生から1カ月を迎える。判明しているだけで浄土真宗本願寺派162カ寺、真宗大谷派54カ寺、曹洞宗46カ寺、浄土宗5カ寺―など、宗派を問わず多数の寺院に甚大な被害をもたらしており、復旧はなお苦難の道のりだ。そうした状況下で、曹洞宗神照寺(熊本県球磨村)の岩崎哲秀住職は宗派の垣根を超えて〝仲間〟の支援に奔走。2020年7月の熊本豪雨で被災した教訓を忘れず、「お互いさま、おかげさま」の言葉を胸に、一心不乱に被災寺院を訪問している。

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軽トラで通い続ける

 「太陽が昇って明るいうちはずっと動き回ってます」。そう言いながら岩崎住職は軽トラックの荷台から支援物資を下ろした。

 地震発生翌日の7月29日から「じっとしていられない」と動き始めた。最初の頃は自坊の周辺や知り合いの店で水や食料などを購入し、ハンドルを握った。

 熊本県球磨村から八代市までは車で約2時間。その長い道のりを、岩崎住職は毎日通い続けている。活動の拠点としているのは親戚でもある同市の曹洞宗久嚴寺(鷲峰悟参住職)。同寺も被災しており、庫裏の一階部分は押しつぶされ、本堂も補強でなんとか立っている状態だ。

 8月12日は浄土真宗本願寺派覚円寺(同芦北町)の黒田了智住職とともに、軽トラック2台で縦横無尽に被災地を駆け巡った。支援活動を行うタレントの紗栄子さんから届いたという空調ジャケットとともに、水などを届け、現在の状況を聞き、復興に向けた過程などをアドバイスした。

明るい声が背中押す

 加藤清正の嫡男・忠正の菩提(ぼだい)寺として地域住民から親しまれている八代市の日蓮宗本成寺(赤城義晋住職)。本堂や高麗門(市指定有形文化財)、清正をまつって〝せいしょこさん〟と呼ばれ親しまれていた和光堂が、跡形もなく崩れ落ちた。

がれきと化した日蓮宗本成寺本堂の屋根で言葉を失う曹洞宗神照寺の岩崎住職=12日、熊本県八代市
がれきと化した日蓮宗本成寺本堂の屋根で言葉を失う曹洞宗神照寺の岩崎住職=12日、熊本県八代市

 岩崎住職の訪問を笑顔で迎えた赤城義元副住職は「怒りよりも悲しみの方が大きい」と話した。岩崎住職は倒れた墓石の中を歩き、がれきと化した本堂の屋根に上り、壊滅した伽藍(がらん)をしばらく見つめた。「必要な物があれば、気軽に声をかけてください」。よく通る明るい声が青空に響き、被災者の背中を押す。

 防犯カメラには地震の瞬間が映っていた。「ふわっと浮いて、ぼんと崩れた感じ」と義元副住職。数日後、地元消防団や住職仲間などが本堂の屋根をくりぬいて、本尊を救出した。頭は空洞部分にあり、奇跡的に無事だったという。

救出された本尊に、静かに手を合わせた=12日、熊本県八代市
救出された本尊に、静かに手を合わせた=12日、熊本県八代市

 「その時にその人たちが集まったからこそ、本尊が助けられたのでしょう」。ゆっくりと手を合わせて語った岩崎住職の言葉に、義元副住職は大きくうなずいた。

終わりなき〝恩送り〟

 岩崎住職は休みなく動き回る。八代市の浄土真宗本願寺派光圓寺では、小山周作住職に支援物資を手渡した。

小山住職(右)に物資を届ける岩崎住職(左)と黒田住職=12日、浄土真宗本願寺派光圓寺
小山住職(右)に物資を届ける岩崎住職(左)と黒田住職=12日、浄土真宗本願寺派光圓寺

 「揺れたというよりも、音がしたら本堂が落ちていた感じ。一気に崩れ落ちた」。まずは家族の無事を第一に考えて行動したと小山住職は振り返りつつ、「地震があったからといって、門徒さんや地域の方との接し方が変わることはない」と語る。

 臨済宗妙心寺派法輪禅寺ではようやくトイレが1カ所使えるようになり、少しずつだが生活環境が整いつつある。

 10年前の熊本地震で被災した際に多くの人に助けてもらったという阿蘇市のパン店から、「被災した方々にパンを振る舞いたいが、どこに託したらいいのか分からない」と、大量のパンが届いた。饗庭宗久住職は「お寺への信頼感や、近所の人たちとの深いつながりを改めて感じた」と語る。

 八代市の日蓮宗浄信寺は山門が崩れ、倒壊をまぬがれた庫裏は危険な状態のため、山野貫雄住職は境内にテントを張って寝泊まりを続ける。「乗り越えるだけです」と話す山野住職に、2020年の熊本豪雨を経験した岩崎住職が撤去の方法をアドバイスした。

 「水害で被災したときに、いろいろな方に助けてもらった。本願寺派の方に『お互いさまです』と言ってもらい、真宗大谷派の方には『恩送り』という言葉を教えてもらった」

 先が見えない中で途方に暮れる住職に寄り添う岩崎住職。岩崎住職の笑顔は、相手の心に深く染み入る。過去の災害の教訓は、確実に生かされている。